はじめに
最期まで自宅で看取るというのは、理想だと思います。
ご家族が自宅で看取りまでがんばりたいと言われたら、ケアマネージャーも全力でお手伝いします。
家族だけでがんばるんではなくて、介護保険のサービスも医療の力も借りてくださいね。
今回は、私が経験した在宅での看取りのケースを、参考になればと思い書きましたので、ぜひ読んでみてください。
97歳の母と息子の関係性とデイサービスを利用するまで
97歳で車いす、認知症はあるけど、会話はできてすごくおもしろいおばあちゃんがいました。
長男夫婦と同居していて、その長男さんが主に介護をされていて、お嫁さんが家事の支援をされていました。
この長男さん、ちょっとこだわりが強くて、いい意味で変わり者です。
初めてお会いした時には、すでに要介護3で車いすでしたが、介護保険のサービスは何も使っていませんでした。
排泄のお手伝いも、入浴のお手伝いも、長男さんがされていたんです。
すごいと思います。
息子さんが、お母さんのおむつを交換したり、お風呂に入れたりするなんて、私は初めて聞きました。
でも、いよいよ大変になったということで、長男さんが自分で介護保険の申請をして、直接私がいる居宅介護支援事業所に電話をしてきてくださり、担当することになりました。
長男さんとしては、お風呂が一番大変なので、お風呂の手伝いをしてほしいとのことでした。
本人に聞くと「あーもう、そがんとはわからんけんどがんでもよか。息子と話ばしてからよかごてしなっせ。」と言われます。
口は悪いおばあちゃんですが、すごく信頼関係ができているご家族だなと思いましたね。
長男さんは自営でお仕事をされていて、本人を一人で留守番させることもあると言われたので、デイサービスを提案して利用することになりました。
ケアマネージャーとしては、その他にも色々気になることはたくさんありましたが、一旦デイサービスだけにしました。
車椅子は、頑張る家族さんあるあるで、購入されていたものを使っていました。
デイサービスの送迎でひと悶着ありました
デイサービスは、スタッフが朝から自宅までお迎えに行ってくれます。
お迎えに行って、必要であればお部屋に行って、車いすに乗せるところから手伝ってくれます。
※デイサービスによってはリスク回避のためしてくれないところもありますので要相談ですね
この長男さん、変なこだわりが強くて、家の中では車いすを使いたくないと言われます( ゜Д゜)
なので、本人は家の中ではハイハイをして移動されていました。
私の感覚では、家にはベッドを置いて、ベッドから車いすに乗り移って、玄関には折り畳み式のスロープをつけて出入りするイメージです。
でも、それはダメだと言われます。
結局、本人の部屋の掃き出し窓の外に車いすを置いて、本人をお姫様抱っこして窓から降ろして、車椅子に乗ってもらうことになりました。
デイサービスのスタッフは、女性も多いのでお姫様抱っこをして車いすに乗せるのは長男さんがすることになりました。
当の本人は、とても賑やかで朗らかな方だったので、問題なくデイサービスに通うことができました。
「最期まで自分が看る」と決意されていたので、福祉用具を提案しました
この長男さん、お母さんを施設に預けるなんてことは、全く考えていませんでした。
おまけに利用しているサービスは、デイサービスのみ。
ベッドも借りようとされません。
でも、数年たったところで、食欲が落ちてこられて、褥瘡ができそうになる時期が来ました。
褥瘡は栄養状態が悪くなると、できやすくなります。
そうすると、やっぱりベッドとエアマットを利用した方が、本人が楽なんですよね。
この長男さん、自営されていたと言いましたが、実はお布団屋さんなんですよ。
なので、お母さんは長男さんこだわりの、お高いお布団に寝ていました。
いいお布団ですが、やっぱりエアマットにはかなわないんです。
なので、福祉用具さんにも来てもらって、詳しい説明をして、なんとかベッドとエアマットを入れることができました。
そして、ベッド上でご飯が食べられるように、サイドテーブルも借りました。
「使ってみると、ベッドは便利だねー!おむつ交換の時とかも楽になったよ」と言ってくださって、ほっとしたことを思い出します。
ちなみに、この長男さん、こだわりが強くて、いい意味で変わり者ですがイケオジです( ´艸`)
すこしずつ身体が弱ってきたので、デイサービスから訪問入浴に切り替えました
お会いした当時が97歳で、それから2年経ったころです。
その頃になると、デイサービスからも本人さんの体力を考えると、通うのは大変じゃないですか?って報告を受けていました。
車に乗って行きかえりだけでも、体力消耗しますからね。
食事量も減って、寝ている時間が多くなってきたし、少しずつ身体全体にむくみが出てこられてました。
相変わらず口は達者でしたけど(⌒∇⌒)
長男さんに現状をお話しても、特に体調が悪そうじゃないからと言われ、病院受診もほとんど行かないし、今まで通りにしてほしいと言われます。
ケアマネージャーとしては悩みました。
「普通はみんなこうしていますよ」って言うのは、絶対に言いません。
だって、私の普通と、それぞれの家族の考える普通って違いますからね。
でも、できるだけ、自宅で本人も楽に、家族も大変にならないようにしてあげたいと思っていました。
そこで、デイサービスはやめて、訪問入浴を入れることにしたんです。
これはよかったですよ。
でかけることはないので、本人の体力も保てるし、お風呂は入れるし、本人も長男さんも喜んでくださいました。
在宅で看取りをする時は、訪問診療や訪問看護をお願いします
在宅や施設で、自然のままに看取りをしたいという希望があったら、訪問診療や訪問看護を入れます。
自宅で急に呼吸が止まったりすると、警察の取り調べが入ることもありますからね。
それだけではなくて、やっぱり自宅で本人が楽に最期の時を迎えるためには、医療の力が必要なんです。
でも、この長男さん、必要ないと言われるので、利用していませんでした。
なので、今以上に具合が悪くなったら、病院に行くか、救急車を呼んでくださいと伝えていました。
最期の時はあっけなく来ました
訪問入浴を入れて1ヶ月くらい経った頃、長男さんから電話がかかってきました。
「意識が朦朧としているので、救急車で病院に来ました」ということでした。
その数時間後、「息を引き取りました」と連絡がありました。
あっという間だったみたいです。
救急車に乗るときは息があったそうですが、少しずつ呼吸が確認できなくなって、そのままでした。
さいごに
今回の看取りは、私の中では不完全燃焼でした。
もっとできることがあったんじゃないかと、今でも思います。
長男さんは「ギリギリまで自宅で看れたので感謝しています」と言われましたが、今でも心残りがあります。
もっともっと長男さんとしっかり話ができていれば、もう少し本人が楽に自宅で過ごせたんじゃないかなと考えるんですよね。
そんな思いを抱えながら、お葬式にいかせてもらいました。
そのお葬式でですね、遺影の写真が全く別人なんですよ( ̄▽ ̄;)
長男さんに聞いたら「本人が40歳くらいの時の写真を使ってますからね」と言われました。
もうびっくりしましたよ!
違う人のお葬式に来たんじゃないかと不安になりましたが、「こだわりの長男さんらしい写真ですね」と言いながら二人で笑いました。
この体験は、家族と本人の意向をどこまで尊重するのか、ということを考えさせられ、まだまだ勉強が足りないなと反省させてもらえたご家族との出会いでした。
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