【ケアマネ体験談⑥】介護の先にあるのは別れじゃなく“愛”だったー80代夫婦の老々介護の実話

ケアマネの現場から

はじめに

80代で、5歳差の仲のいいご夫婦がいました。

ご主人が年上で要介護2、奥様は上品でお元気な方でした。

とは言え、奥様も当時82歳でしたので、立派な老々介護です。

「老々介護」って実際どうなんだろう?と思う方も多いと思います。

私がケアマネジャーとしてかかわったご夫婦のことを綴りますので、参考にしてもらえるとうれしいです。

一緒に寝ていたし、一緒にお風呂に入っていました

地域包括支援センターからの紹介で、ご主人の担当をすることになって訪問しました。

お二人ともとても穏やかで、見るからに仲良しご夫婦です。

寝る時はダブルベッドに一緒に寝ていると言われていました。

そして、お風呂もご主人一人では入れないからということで、毎日一緒に入っているそうです。

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奥様がご主人の入浴介助をするというのはよく聞きますが、一緒に入っているというのはあんまり聞いたことがありませんでしたので、正直言うと少しびっくりしました。

食事の準備や掃除は、元々奥様ずっとされていたので、その時も全部奥様がされていました。

と言っても、夕食は宅配のお弁当を頼んでおられ、上手に手を抜くこともできていました。

仲良し夫婦の困りごととは?

もちろんご主人に困ったことはありません( ´艸`)

だって、何でも奥様が手伝ってくれるから、何不自由ない生活を送られていましたのでね。

奥様から、家にずっといるので、運動不足で足腰が弱ってきていることと、認知症からくる物忘れが気になるということを伺いました。

認知症はそこまでひどくなくて、その場での会話は問題なくできます。

でも、何回も同じことを聞いてきたり、探し物が多かったりと奥様も少し対応に困っている様子でした。

そして、このご夫婦の自宅は、玄関に到着するまでに、15段ほどの急な石の階段がありまして、お風呂場は2階にある珍しい間取りで、2階に上がるのも昔の建物なので、すごく急な階段でした。

なので、階段が登れなくなったら、自宅での生活ができなくなるんですよね。

今のところ、何とか階段を登ることができるけど、「今後できなくなったらどうしよう」と不安を感じておられるようでした。

運動とお風呂はデイサービスを提案しましたが、ご主人は奥様と一緒がいいと言われます

運動を定期的にするには、やっぱりデイサービスに行くことです。

行けばみんな運動をしているので、なんとなく流れで運動をしてくださいます

お風呂は奥様と一緒に入る方がいいと言われていましたが、奥様も高齢なので疲れると思い、デイサービスでの入浴を提案したんです。

提案すると、奥様から「本当は一人で入りたい」という言葉が漏れました

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80代の女性は本当にがんばる方が多いです。

自分のことは後回しで、家族のためにがんばることができるんですよね。

本当は一緒に入りたいのかな?と思いつつ、デイサービスでの入浴を提案してよかったと思いました。

デイサービスに行きだしてしばらくの間は、「妻が一人だと心配だ」と言われて行きたくなさそうにされていましたが、慣れてくると楽しんで行くことができるようになられました。

そういえば、デイサービスのおかげなのか、奥様のおかげなのか、認知症の進行はそこまで目立ってありませんでした

デイサービスとデイケアの違いは↓の記事を見てみてくださいね。

階段やトイレには住宅改修で手すりをつけました

外の階段は石でできていて、私が昇るのも気をつけないと滑りそうなくらい急でしたので、手すりをつけました。

家のなかは玄関の上がり框と、トイレ、二階に上がるための階段に手すりをつけました。

二階はお風呂に入らないから必要ないのでは?と思うかもしれないですが、ご主人の日課が、毎日の雨戸の開け閉めだったんです。

たまーに調子がいいときは、草取りもされていたみたいですけどね。

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一階も、二階も、毎日朝から開けて、夜には雨戸を閉めに行くのがご主人の唯一と言っていいくらいのお仕事でした

危ないからと言って何でも「ダメ」って言うと、できることをどんどん奪っていくことになりますので、ある程度は目をつぶることも必要ですね。

手すりをつけると、喜ばれたのはご主人より奥様でした。

奥様も骨粗しょう症があり、腰や首が痛いと言われていたので、手すりがついて生活が楽になったと言われていました。

住宅改修については、↓の記事を読んでみてください。詳しく書いています。

体調を崩し、入院されることになりました

デイサービスを利用しながら、穏やかな生活を送っておられましたが、1年後くらいに持病の心臓病が悪化し入院することになりました。

奥様は、毎日毎日、バスに乗って病院に面会に行かれていました。

お見舞いに行くと手を握ったり、顔を拭いてあげたりと、本当に仲睦まじい姿を見せてくれていたそうです。(看護師さんから聞きました)

そしてご主人は、ちょっと調子がいいと看護師さんに「奥さんに電話したい」とわがままを言っていたみたいですよ。

入院直前まで一緒のベッドで寝ていたので、お二人とも寂しかったんだと思います。

本当に仲がいいですよね。

最期を迎える時

三ヶ月くらいして、そろそろ退院してもいいかもしれないということで、病院に話を聞きに行きました。

その時、長男さんも来られていたので、なんとなく流れで、ご夫婦二人の写真や、家族三人の写真を撮って差し上げたりしました。

すごくいい時間でした。

実は、このご夫婦の次男さんは、20代で亡くなっておられます。

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奥様からは「親として子供を看取るのも悪いことではないなと今は思うことができるようになりました」と伺いました。

そんなつらいことを乗り越えたご夫婦だからこそ、こんな深い絆を築いているんですよね。

長男さんは、次男さんの分も退院後はしっかり手伝いをしたいと言われていました。

でも、退院直前にご主人は急変され、亡くなりました

本当に急なことで、奥様も長男さんも受け止めるのが大変だったと思います。

さいごに

このご夫婦には、ケアマネージャーとしてかかわりながら、支えることの意味を考えさせられました。

ただ一緒にいることの大切さをふたりは教えてくれた気がします

ケアマネジャーにできることって、本当に微々たることなんですよね。

仕事をしながら、たくさんのことを勉強させてもらい、本当にありがたい仕事をしているなと日々感じています。

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ちなみに、この奥様から5年ぶりくらいにお電話をいただき、今度は奥様のケアマネジャーとして担当させていただくことになったんですよ。

すごくうれしかったです。

お別れするときに、何かあれば連絡くださいと携帯電話をお伝えしていたのを大切に持っていてくださっていて、お電話をしてくれました。

こんなことって、あるんだなと本当にうれしかったし、ケアマネジャー冥利に尽きますよね。

気持ちを新たにがんばりますよー!

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